
はじめに:「完全無料」という幻想 #
前編では、65~130万円の外注見積もりに直面して、「無料ツールで何とかする」という選択をしたことを記しました。
ここで、誤解のないように最初に言っておきたいことがあります。
「完全無料でリニューアルができた」というわけではありません。
実装を始めてすぐに、その現実に直面することになったのです。
第1章:無料で揃ったツール群 #
プロジェクトを開始したとき、私たちが活用できる無料ツールは、想像以上に多くありました。
- Claude(無料チャット版)
- Gemini(画像生成)
- Copilot
- Unsplash(高品質な画像素材)
- VS Code(テキスト・コード編集)
これらのツールだけでも、かなりのことができます。
Claude に「このセクションはどう改良したらいいか」と聞けば、提案をもらえる。Gemini で「製造業っぽい画像を作ってほしい」と言えば、イメージに近い画像が生成される。Unsplash から無料でダウンロードできる高品質な写真も、プロっぽい雰囲気を作るのに役立ちます。
最初の数日間は、この無料ツールだけで「こんなに進むんだ」という感動がありました。
予算ゼロで、ここまでできるんだ——そう思っていました。
第2章:それでも有料化した理由(Claude 月 $20) #
その感動は、3日目で現実に叩き落とされました。
Claude の無料版には、利用回数に制限があります。
「次の時間まで待機してください」というメッセージが表示されるようになったのです。
その瞬間、作業は完全に停止しました。
待機時間が生む非効率 #
ここで何が起きたかというと、単なる「時間の停止」ではなく、「思考の中断」が起きたのです。
今やっている改良案について、Claude に「どう思う?」と相談しながら進めていたプロジェクト。その相談相手が突然いなくなってしまいました。
次の時間まで待つ間、私は何をしたか。
他の業務に移る。でも、数時間後に「あ、さっきの Claude との相談を続けたい」と思っても、別の案件に頭が切り替わっている。効率が落ちます。
さらに、せっかくのモチベーションも下がってきます。
「こういう小さなストレスの積み重ねが、大きなプロジェクトの挫折につながるんだろうな」
そう思いました。
月 $20(約 4 千円弱)という判断 #
その時点で、私は Claude の有料版(Claude Pro)を契約することに決めました。
月4千円程度(20ドル)です。
経営者としての判断は、シンプルでした:
「この4千円で、作業が中断されず、思考が連続する。それで、改良の質と速度が上がるなら、投資として成立する」
65~130万円の外注費用に比べれば、月4千円は微々たるものです。でも、その4千円が、プロジェクト全体の効率を大きく変えたのです。
第3章:情報との向き合い方(能動 vs パッシブ) #
プロジェクトを進める中で、別の重要なことに気がつきました。
それは、「情報の流し込み方」についてです。
「情報過多のまま」という戦略 #
私は、Feedly というサービスで、毎日大量の情報を流し込んでいます。
登録しているカテゴリは、仕事に直結するものばかりではありません:
仕事関連:
- 建築体験
- iPhone
- 製造業
- パソコン関連
- アプリ紹介
- プログラミング
教養・読み物:
- ビジネス
- 文具
- 自動車
- スポーツ
- 自転車
更新頻度も、毎日から「時々更新」までバラバラです。
つまり、毎日、大量の「関連あるか不明な情報」が流れてくるわけです。
一般的には、これは「効率が悪い」と見なされます。
「本当に必要な情報だけを、的確に取ってくるべき」という考え方が、情報時代の常識かもしれません。
なぜ「情報過多のまま」なのか #
でも、私はあえてこのやり方を続けています。
理由は、シンプルです。
能動的に「これを探す」と決めて探していると、視野が狭まるのです。
「HP リニューアル」という課題について、「HP リニューアル」というキーワードだけで検索していたら、一定の範囲の情報しか手に入りません。
一方、Feedly で「スポーツ」や「文具」の記事も流れてくる中で生活していると、予期しない視点が目に入るのです。
「あ、この戦術の考え方は、Web デザインにも応用できるかも」 「自動車の安全設計の考え方、製品PR にも使えそうだ」
そういう、一見無関係に見える情報が、実は課題解決の突破口になることがあるのです。
「Claude で HP を作る」という記事との出会い #
実は、このプロジェクトの起動のきっかけになった「Claude で HP を作る」という記事も、その流れの中で出会いました。
記憶は定かではないのですが、Feedly で流れてきた、一見関係ないようなサイトから、その記事にたどり着いたのだと思います。
「生成AI で HP が作られている」「そういう方法もあるのか」
その記事を読んだ瞬間、「だったら、うちもやってみようか」という気持ちが湧いてきました。
もし、「HP リニューアル」というキーワードだけで目的的に情報を探していたら、その記事には出会わなかったかもしれません。
第4章:費用対効果の判断軸(時間効率視点) #
では、ここまでの投資を、どう評価するのか。
65万円の外注費用 vs 月 4 千円の投資 #
前編で触れた、65~130万円の外注見積もり。
それに対して、私たちが投じた費用は:
- Claude Pro:月 $20(約 4 千円)
- その他の無料ツール:月 0 円
単純に考えると、65~130万円の節約に成功した、ということになります。
でも、本当にそうなのか。
「時間」という隠れたコスト #
経営者として考えるべきは、「お金」だけではなく、「時間」です。
HP リニューアルに、私自身がどれだけの時間を費やしたのか。その時間を、本来の製造業務に充てていたら、どれだけの売上が出たのか。
また、完全に自分で実装することで、学習コストが生まれました。HTML、CSS、生成AI の活用方法——それらを学ぶのに、かなりの時間をかけました。
外注していたら、「プロにお任せして、その間は他の業務をしていた」という選択肢がありました。
その点では、外注の方が「時間を買う」という意味では合理的だったかもしれません。
それでも「月 4 千円の投資」を選んだ理由 #
にもかかわらず、私は月 4 千円の Claude Pro を契約することを選びました。
理由は:
「そのお金で、作業が中断されず、思考が連続するなら、価値がある」
ということに、尽きます。
完全無料で実装しようとすると、待機時間に思考が中断される。その中断が、意思決定の遅延や、修正作業の増加につながる。
その結果、「本当は 2 週間で終わる案件が、3 週間かかった」みたいなことが起きてしまいます。
月 4 千円で、その非効率を解消できるなら、それは投資として成立する——そう判断したわけです。
さらに言えば、自分で作ったからこそ、今後の更新や改良が自由自在になった。機能を追加したい、デザインを微調整したい、そう思ったときに、外注に頼らず自分たちで対応できる。その長期的な自由度と素早い対応能力は、何物にも代え難いメリットなのです。
おわりに:「予算がない」ではなく「予算の使い方を変える」 #
このプロジェクトを通じて、学んだことがあります。
それは、「完全無料で何かをする」というのは、現実的ではないということです。
でも、同時に「65万円の投資は不可能」というのも現実です。
ならば、どうするのか。
「予算がない」という状況の中で、「どこに投資するか」を選ぶ。
その選択が、全体の効率を決めるのです。
私たちの場合:
- 外注の 65~130万円には投資しない
- でも、Claude Pro の月 4 千円には投資する
- Unsplash などの無料ツールは活用する
- Feedly で情報を流し込み、予期しない発見を待つ
その組み合わせの中で、「完全無料ではないが、大幅に費用を削減しながら、質の高い改良ができた」というのが、実装の実感です。
零細製造業の経営者として、限られた予算の中で、何をするのか、何をしないのかを判断する。
その判断の一つの事例として、このプロジェクトの記録を残しておきたいと思いました。
HP のリニューアルを考えている他の中小企業の経営者が、「あ、こういうやり方もあるのか」と参考にしてくれたら、幸いです。